アニアス司教だった

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アニアス司教だった


「リチアスに用がある。案内してくれ」スパーホークは感情のこもらない声で言った。
 男はかすかに青ざめたが、足を止め、尊大な表情を取り繕った。
「しかし――どうしてあなたが――」
「聞こえなかったのかね、ネイバー」
 栗色の胴衣を着た男は怯《おび》えたように後じさった。
「た、ただいま、サー・スパーホーク」口ごもりながら答えると、男は踵《きびす》を返して広い中央廊下を進みはじめた。肩が目に見えるほど震えている。役人の案内しようとしている先が玉座の間ではなく、アルドレアス王がいつも相談役と話し合うのに使っていた評議会室であることにスパーホークは気づいた。大男の唇にほのかな笑みが浮かぶ。クリスタルに包まれて玉座に座っている若き女王の存在が、王位を狙うリチアスの努力に水をさしているらしい。
 評議会室の前まで来てみると、二人の男が扉を警護しているのがわかった。着ているのは教会兵の赤い制服――アニアス司教優纖美容好唔好の手の者だ。二人は反射的に槍を交差させて室内への道をはばんだ。
「女王の擁護者が摂政の宮とお会いになる」役人が震える声で二人に告げた。
「女王の擁護者をお通しせよとの命令は受けていない」兵の一人が答える。
「では、今ここで命令する。扉を開けろ」スパーホークが言った。
 栗色の胴衣《ダブレット》の役人は急いで走り去ろうとしたが、その腕をスパーホークがすばやくつかんだ。「まだ仕事が残ってるぞ」そう言って二人の警備兵に視線を戻す。「扉を開けろ」
 長い間があった。教会兵はスパーホークを見つめてから、不安そうに顔を見合わせた。一人がごくりと唾《つば》を飲みこみ、槍を取優纖美容好唔好り落としそうになりながら扉の把手《とって》に手を伸ばした。
「到来を告知してもらわないとな」スパーホークは籠手《こて》を着けた手でしっかりとつかまえている男に言った。「いきなり入っていって、驚かせたりしたら悪いじゃないか」
 男はわずかに目を血走らせながら、開いた戸口をくぐると咳払《せきばら》いをした。つっかえながら、それでも大声で呼ばわる。
「女王の擁護者、パンディオン騎士、サー・スパーホークが参りました」
「ご苦労だった、ネイバー。もう行っていいぞ」
 役人はたちまち姿を消した。
 評議会室はかなりの広さがあり、絨毯《じゅうたん》とドレープ・カーテンは青で統一されていた。巨大な枝付き燭台《しょくだい》が壁に沿って並び、部屋の中央の磨き上げられた長いテーブルの上には、さらにたくさんyou beauty 美容中心の蝋燭が灯っていた。テーブルの前には四人の男がいて、三人は書類を前に腰をおろし、あとの一人は椅子から腰を浮かしかけていた。
 立ち上がったのは。最後に会った十年前に比べるとずいぶん痩《や》せ細り、顔色も悪く、衰えが目立つ。うしろで束ねた髪にも白いものが混じっている。アニアスは裾《すそ》の長い黒の法衣を着て、シミュラの司教の地位を表わす宝石をちりばめたペンダントを、太い金の鎖で首にかけていた。部屋に入ってきたスパーホークを見て、目を丸くして驚き、警戒しているようだ。
 これと対照的なのが七十歳を超える白髪の老人、レンダ伯だった。明るい灰色の胴衣《ダブレット》に身を包み、大きな笑み優纖美容を浮かべて、皺《しわ》だらけの顔の中で淡青色の瞳を輝かせている。悪名高い男色家のハーパリン男爵は、驚愕の表情で腰をおろしていた。色の取り合わせがめちゃくちゃな服を身につけている。その隣の太りすぎの赤い服の男には、スパーホークも見覚えがなかった。
 われに返ったアニアスが鋭い声を上げた。
「スパーホーク! ここで何をしている」
「わたしをお探しと思いましたので、猊下。手間を省いて差し上げようと考えたまでです」
「追放命令に背いたことになるのだぞ、スパーホーク」アニアスは怒りもあらわに叫んだ。
「その点も話し合う必要がありそうですな。聞くところによると、私生児リチアスが摂政の宮として、女王陛下が健康を回復なさるまで政務に就いているとか。ここに呼んでくれば二度手間にならずにすむと思いますが」
 アニアスはショックと怒りに目をむいた。
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