ようと思ったんで
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ようと思ったんで
「何だって」
「冬になると水位が上がって、掘り返された跡を洗い流してしまう」
「なるほど。筋は通ってるな」
それから半時間ほど、一行は用心深く水際を進んでいった。
「あとどのくらいあるんだ」カルテンがスパーホークに尋ねた。「地図はおまえしか持ってないんだからな」
「十リーグってところだ。これだけ広い砂浜なら、疾駆《ギャロップ》で行っても大丈夫そうだな」スパーホークはファランの脇腹を小突き、速度を上げさせた。
雨は小止みなく降りつづけ、あばたになった湖の表面は鉛色をしていた。水際を何マイルか走ると、疲れた顔でずぶ濡れの地面を掘っている人々に出くわした。
「ペロシア人だ」アラスがばかにするように言った。
「どうしてわかる」とカルテン。
「あのふざけた三角帽だ」
「なるほど」
「あれは頭の形に合わせてあるに違いない。たぶん宝の噂を聞きつけて、北からやってきたんだろう。追い払うか、スパーホーク」
「掘らせておけ。べつに邪魔にはならない――あそこであのまま作業している限りはな。シーカーに支配されているなら、宝に興味を持ったりはしない」
その日は午後遅くまで砂浜を駆けつづけた。
「あそこで野営してはどうでしょう」クリクが流木の折り重なっているあたりを指差して提案した。「荷物の中に乾いた薪《たきぎ》がありますし、あの流木の山の下のほうにも、濡れていない木があるんじゃないかと思います」
スパーホークは雨の降りつづく空を見上げ、時刻の見当をつけた。
「そろそろ休憩すべきだろうな」
一行は流木のそばに馬を止め、クリクが火を熾《おこ》した。ベリットとタレンは比較的湿っていない木を流木の中から探したが、しばらくするとベリットは自分の馬のところへ行き、戦斧《バトルアックス》を手に取った。
「それをどうするつもりだ」とアラス。
「流木を割って小さくしすが、サー?アラス」
「だめだ」
ベリットは少し驚いた顔になった。
「それは木を割るようには作られてない。刃がなまってしまう。斧はこの先すぐに必要になるぞ」
「荷の中にわたしの斧があるから、それを使え」恥じ入っている見習い騎士にクリクが声をかけた。「あれなら誰かを叩き斬る予定はないからな」
「クリク」スパーホークとカルテンが教母とフルートのために設営した天幕の中から、セフレーニアが呼びかけてきた。「火のそばに囲いをして、ロープを張ってください」中から現われた教母はスティリクム人のスモックを着て、水の滴る白いローブとフルートの服を両手に持っていた。「そろそろ服を乾かしておかないと」
日が沈むと夜風が湖から吹きわたり、天幕をはためかせ、炎をなびかせた。一同は粗末な夕食を摂《と》り、寝床にもぐりこんだ。
真夜中ごろ、見張りに立っていたカルテンが戻ってきてスパーホークを揺り起こした。「おまえの番だぞ」ほかの者を起こさないよう、小さな声でささやく。
「わかった」スパーホークはあくびをして起き上がった。「いい場所があったか」
「浜のすぐうしろの丘がいい。上り坂に気をつけろよ。そこらじゅう掘り返されてるから」
スパーホークは甲冑を着けはじめた。
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